「食料庫の備蓄?何故、そんなことを俺に聞く」 「あいにくと、エルルゥ様は外出しておいでです。私では、おおまかにしか把握しておりませんので」 「……だから、何故俺に聞く」 「モロロの備蓄量は問題無いようですが、肉モロロ・焼きモロロ・モロロ団子・揚げモロロ……どの種類の買い足しが必要か、貴方なら御存知でしょう」 「お、俺が、そんなことを知る訳……」 「毎日、御覧に来ているではないですか」 「毎日は来てない!」 「……それで、どうなのですか。お分かりになりますか」 「………分かる、と思う」 「では、食料庫を確認の上で、一覧を提出して頂けますか」 「分かった。いつまでだ」 「出来れば、夕刻までには」 「夕刻までだな」 「……オボロ」 「何だ、まだ何かあるのか」 「現在の食料庫の備蓄量は全て把握済みですので、不自然に無くなっている物があれば、すぐエルルゥ様に御報告致します」 「……!! そ、そうか」 「はい。黒い鼠には、どうかご注意を」 「聖上、食料庫備蓄の件で御報告に上がりました」 「ご苦労だったな。エルルゥが居てくれれば、早かったんだが」 「いえ。私も把握することが出来ましたので、良い機会でした」 「そうか。……ところで、この一覧はオボロが作ったのか?」 「えぇ。エルルゥ様の他に詳しい者というと、オボロかカルラ辺りしかおりませんでしたので」 「……あぁ、確かにな……。しかし、本当に詳しく把握しているな」 「はい。そのようですね」 「……抓み食いが功を奏して……というのは、流石にどうかと思うが……」 「聖上。オボロは、抓み食いなどしてはおりません」 「は!? いやいや! しているだろう。いつもエルルゥに追いかけられている事ぐらい、ベナウィも知っているだろう!?」 「存じています。ですが、あれはあくまでエルルゥ様が個人的に作っておられる食料に限って、拝借しているのです」 「そうなのか?」 「えぇ。国庫の食料には一切手をつけたことなどありません。国庫の食料は民の物。当然、手をつけるべき物ではありませんから」 「……ほぉ、そうか。知らなかったな。……あぁ、だから黙認していた訳か」 「抓み食いが良い事とは思っておりませんが、私が口出しするような事柄でもありませんので」 「そうすると、カルラやアルルゥが手をつけているものもそうなのか?」 「いいえ。あれは国庫にも手を出しております。カルラとムティカパの消費する抓み食いの量を、エルルゥ様だけで賄えるとお思いでしたか? 聖上」 「う……まぁ、無理…だな」 「気になってはおりましたが、食料はエルルゥ様の御管轄。口出しは致しません。……ですが、この所は目に余る様子。この機会に、聖上からも御進言下さい」 「分かった。分かったから……そう、睨むな……」
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