日めくりログ・21日〜30日

4月中行っていた日めくり更新のログです。
説明文は、今日は何の日サイト様より抜粋させて頂きました。


4月21日
民放の日(放送広告の日)

「トゥスクルのみなさーん!皇城から、公開放送ですよぉーー!」

「あらためまして、皆様こんにちは。司会のエルルゥです」
「皆様こんにちは、司会のハクオロです」
「初めてのことで拙い二人の共同作業ですが、皆さん、最後までお付き合い下さいね」
「えーでは、まず、民の皆さんからの嘆願書を紹介していきます」
「辺境の村にお住まいの『辺境の女は最強さん』から頂きました。有難うございます」
『ハクオロ、エルルゥ、元気にしてるかい?うちの宿六は相変わらずだよ。嘆願書を公開放送で読んでくれるって言うんで、出してみたんだけど、ちゃんと読んで貰えるのかねぇ』
「はーい、ちゃんと読んでますよ」
『最近、またキママゥが住み着いちまったみたいで、新しい畑の作物が荒らされて困ってるのさ。どうにかしちゃくれないかねぇ。それから、エルルゥ、恋はヤったもん勝ち、既成事実は有効だから、頑張るんだよ』
「はい、キママゥに関する嘆願ですね!現在、被害のある地域を選別し、ベナウィと討伐隊派遣の手筈を整えております。皆さん、ご安心下さい」
「既成事実ですね!早速今度、試してみます」
「いやいや!そこはほら、冗談として流す所だから、ね!?こほん、えーでは、次のコーナーに行く前に、宣伝です。どうぞ!」

『行商人チキナロにかかれば、人身売買以外は何でもお任せ!困ったなと思ったら、チキナロまでご用命下さいです、はい』

「「ゲストのコーナー」」
「このコーナーでは、豪華ゲストの方をお呼びして、質問などに答えて貰おうと言うコーナーです」
「今日の豪華ゲスト様は、クンネカムン國からお越し頂きました、アムルリネウルカ・クーヤ皇と側使えサクヤさんです!」
「クンネカムン國皇、アムルリネウルカ・クーヤだ」
「サ、サクヤです」
「えっと、お二人は主従関係でありながら、幼馴染で仲も良いんですよね」
「うむ。サクヤは余の友達だからな」
「ク、クーヤさま……!あたしなんかを友達だなんて、嬉しいです……!」
「な、泣く事は無いではないか」
「だ、だって……嬉しくて……」
「サクヤは泣き虫だな。……すまんな、ハクオロ」
「いや、構わないさ」
「素敵な友情ですね」
「……えー、では、ゲスト様への質問が来ているな。クンネカムン皇城にお住まいの『ひげじぃ』さんから頂いた質問です。『トゥスクルで行きたい場所はありますかな?』……とのことなんだが」
「行きたい場所ならあるぞ」
「へぇ、何処ですか?城下の小物屋さんとか……」
「妓楼だ」
「ぎ、妓楼、ですか!?でも、そこは……」
「ハクオロが大層楽しい所だ、と、言っておったからな」
「いや!だから、そこは」
「ク、クーヤ様!そこはダメだって言ってるじゃないですかぁ〜!」
「……ハクオロさーん?楽しい所だ、なんて、随分とお詳しいんですね……?」
「詳しいというか、それは、皇として管理上仕方なくだな」
「し、仕方なくって、やっぱりハクオロさん……!!」
「違、そういうことじゃなくてだな」
「もう、知りませんっ!どーぞ、クーヤさんとサクヤさんと、仲良く行っちゃって下さいっ!」
「誤解だ、エルルゥ!待っ、エルルゥさーーん!?」


『この公開放送は、行商人チキナロの提供で、お送り致しましたです、はい』


*民放の日(放送広告の日)
日本民間放送連盟(民放連)が1968(昭和43)年に「放送広告の日」として制定。1993(平成3)年に「民放の日」に改称した。




4月22日
よい夫婦の日

「良い夫婦とは、どういったものだと思いますか?」
「相変わらず、ウルトは言う事が唐突ですわね」
「そんなことはありません。今日は良い夫婦の日、なのですから」
「良い夫婦……やっぱり、仲が良い事じゃないですか?」
「そうですね。仲が良いに越した事はないでしょう」
「某は……夫を立てて、慎ましく夫に尽くす妻の形が、良い夫婦のあるべき姿と、そう心得ておりますが」
「あら、それが良い夫婦の姿だと言うのでしたら、私には無理ですわ」
「ふふ、カルラなら、そうかもしれませんね」
「私は、トウカさんの言う事も一理あるかなーって、思いますけど……」
「えぇ。夫を支え、家族の為に尽くす妻の姿は、素晴らしいものだと思います」
「……あらあら、私の味方は居ないようですわね」
「いいえ、カルラの言う事も間違ってはいません」
「それは、どういうことですか?ウルトリィ殿」
「妻が夫を励まし奮起させ、そうして巧く夫婦生活をしていらっしゃる方も、沢山いるのです」
「あ……!ソポク姉さんとか……?そういえば、おばあちゃんもそんな感じだったって、聞いた事があります」
「そう言われてみれば……この國のご夫婦は、強い奥方が多いように感じまする」
「夫婦の形は千差万別、それぞれの数だけあるのです。ですから、この問いに答えは無くても良いのです」
「……答えは互いで探せ、そう言いたいのかしら?」
「えぇ」
「……成る程、良いお話を聞きました!」
「互いで作りあう、夫婦の形……私も、いつかハクオロさんと……」

「ふふ、ですがまずは、お相手の方に選ばれる事が先決ですけれど」
「……ウルト、先程の良い言葉が台無しでしてよ……」


*よい夫婦の日
講談社が1994(平成6)年に制定。
「よい(4)ふうふ(22)」の語呂合せ。




4月23日
子ども読書の日

『森の中をさ迷う間に太陽は落ち、やがて闇に包まれ始めた』
『どこからか、キママゥの鳴き声が聞こえ……』
「あ、ダメだよオボロ兄さま。そこは、キママゥの鳴き声を入れなきゃ」
「キママゥの鳴き声だと?」
「ん、ちゃんと入れなきゃダメ」
「……あー、『どこからか、キママゥの鳴き声が聞こえてくる』」
『キー!キキーーィ!』
『少女は恐くなって木の根元にうずくまった』
「……もうちょっと迫力が欲しいけど、まぁいっか」
「注文が多いぞ」
「ほら、続き続き!」
『……怯える少女の耳に、獣の咆哮が』……ここもか?」
「うん、ほらほら!」
『怯える少女の耳に、獣の咆哮が聞こえた』
『ヴォルルルルルゥ、グルォオオォォオォ……!』
「おー」
「……ムックルさんみたいです……」
『逃げ出す少女の前に、森の主が現れた。その恐ろしい姿に少女は悲鳴をあげ』
「オボロ兄さま、ほら、悲鳴」
「しょ、少女の悲鳴だぞ!俺に出来る訳がないだろう」
「カミュだって男の子の役をやるんだから、大丈夫だよー!」
「オボロ、悲鳴、やる」
「……お兄様、続きはどうなるのですか?」
「ユズハ……!よし、続きだな。あーあー……『きゃあぁぁぁああぁぁ!!』」
「……オボロ、急にそのような悲鳴を上げて、何をしているのですか」
「うおわっ!?ベ、ベナウィ!?」
「オボロ兄さまに、巻本を読んで貰ってるの!」
「オボロ、まぁまぁ上手」
「はい、とっても楽しいです」
「ユズハ、そ、そうか!」
「あ……ベナウィ兄さま、もしかして、またお勉強……?」
「えぇ、ムント殿が呼んでおられました」
「うぅ〜〜。もう少しで面白くなる所なのにぃ」
「勉強なら仕方がないが……もう少し、待てないのか」
「そうですね……。その巻本は、あとどのくらいで読み終わるのですか」
「あぁ。あと四半刻もかからん」
「……でしたら、お話を最後まで聞きましょう。途中で放り出すのはよくありません」
「ベナウィ兄さま、良いの!?」
「えぇ。私も興味があります。聞かせて頂いても構いませんか」
「うん!あのね、ここからすっごく面白くなるんだよ!」
「ちょと待て、お前も聞いていくのか!?」
「はい。オボロの腕前、期待していますよ」


*子ども読書の日
2001(平成13)年12月に制定。文部科学省が実施。
こどもの読書活動についての関心と理解を深め、こどもが積極的に読書活動を行う意慾を高めることを目的としている。




4月24日
日本ダービー記念日

「この面子なら、俺が一位間違い無しじゃねぇかぁ?」
「ふん、その驕りにせいぜい足を掬われん事だな」
「騎兵衆副隊長に向かってその物言い、強気だねぇ、歩兵衆の若大将さんよ」
「やるからには、勝つ」
「そりゃ、楽しみってもんだ。簡単に勝っちまったら、つまらねぇしな」

「これは、クロウの一人勝ちになるんじゃないか?」
「皆の予想も、クロウが一番人気のようですね」
「ベナウィ、お前が出場すれば、もう少し良い勝負になったんじゃないのか?」
「いえ、私のシシェに持久力はありませんので、こういった勝負には向きません」
「……戦場であれだけの機動力をしておいてか……。お前、こういう泥臭いものに自分の馬を出したくないだけだろう」
「聖上、何か?」
「いや、何も?」
「聖上は、クロウに賭けているのですか?」
「あぁ。まぁ、妥当だろう。しかし、カルラがこういった賭け事に参加しないというのは、意外だったな」
「確実に勝てる勝負しかしませんの」
「しかしこれは、素人目に見てもクロウで決まりだろう。オボロも良い線はいくだろうが、流石にな」
「そうですわね……。7番枠にでしたら、賭けても良いですわ」
「7番枠?枠は6番までしか……」

『走者、一斉に走り出しました。出だしの早い2枠を、3枠一番人気のクロウ隊長が猛烈な勢いで追っています!更にその後ろを5枠二番人気、歩兵衆オボロ隊長が追います!2枠、このまま逃げ切れるのかー!?』

「よし、クロウ、そのままサセ!マクるんだっ!!」

『おっと、ここで猛烈な土煙が……こ、これはっ!?』

「ア、アルルゥ!?」
「うふふ」
「……これはまた」

『ムックルに乗ったアルルゥ様、突然の乱入です!独走状態に入ったクロウ隊長をあっという間に抜き去り……一位着!!大穴、大穴です!!』

「お、大穴も何も、このレースは無効だろう!?」
「あらあら、一人勝ちしてしまいましたわぁ」
「余興なのですから、聖上も腹を括られたら如何です?」
「ええい!馬券の紙吹雪で憂さ晴らしだっ!」


*日本ダービー記念日
1932(昭和7)年のこの日、目黒競馬場で日本初のダービー(東京優駿競争)が開催された。




4月25日
拾得物の日

「……これは、もしや……クロウの忘れ物じゃないのかえ?」
「あ、先日顔を見せに来て下さった時の物じゃないですか?」
「お姉さま、届けに行って差し上げたらどうですか?クロウ様、きっと喜びますよ!」
「はい!おネエさまに会えテ、きっト、喜びまスよ〜」
「そ、そうかえ?それなら……少し出かけてくるから、お前達、後を宜しゅう頼んだえ」

「……これは、帯(トゥバイ)飾りのようやけれど、何やら、手織りのような……」
「姫さん!どうも、お待たせしてすいやせんでした」
「あぁ、気にせんでええ。急に来た、あちしが悪いのさね」
「それで、今日は何用ですかい」
「……これを、届けにねぇ。あんさんの忘れ物と違うのかえ?」
「おぉ、こいつは!やっぱり姫さんの所にありやしたか。探しに行くつもりだったんで、助かりやした」
「そうかい、やっぱりねぇ」
「こりゃあ、小さな姐さんが織ってくれたもんでしてね。失くしたとあっちゃあ、面目が立ちやせんでした。有難う御座いました」
「……小さな姐さんって、クロウ、それは、誰の事だえ……?」
「え?姫さんは知りやせんでしたっけ?薬師の姐さんの妹の、小さい嬢ちゃんですよ」
「……クロウ、あんさん、あんな小さな子ぉから、帯飾りなんて貰っているのかえ……?」
「いや、いつも世話になってるお礼だーとかで、慣れない手で織ってくれたようで……」
「……クロウは、やっぱり小さい娘御が好み……」
「はい?今、何か言いやしたか?」
「い、いややわぁ、あちしは何にも。あんさんの聞き違いじゃぁないのかえ?」
「そうっスか?いやぁ、それにしても、届けて下さって本当に感謝しやす、姫さん!」
「あ、あちしは、館の女将として、客人の忘れ物を放置しておく訳にはいかなかっただけさえ。別に、クロウの為って訳じゃ……」
「例え俺の為で無くたって、構いやせんや。こうして姫さんの元気そうな姿も見られて、安心しやした」
「ク、クロウ……そんな……。あ、あちしなら、いつでもクロウに……」
「お、すいやせん、姫さん。そろそろ行かねぇと、大将にどやされちまいやすんで、失礼させて頂きやす」
「あ……そう、かえ?忙しい所を悪かったなぁ。お勤め、頑張りや」
「ういっス!姫さんも、お帰りはお気を付けて」

「……いつでもクロウに会いに来たい、なんてこと……。やっぱり……言えなかったにゃもぉーーっ!」


*拾得物の日
1980(昭和55)年のこの日、東京・銀座で現金1億円が拾われた。
落し主は現れず、1億円は全額拾い主の手に渡った。




4月26日
オンライン麻雀の日

「基本ルールは同じ柄を三つ三組揃えれば良いのですね」
「揃え方によって役がつきやして、これが役の一覧です」
「……分かりました」
「ベナウィは素人か。勝ったな」
「大将を甘く見ちゃ痛い目見るぜぇ、若大将」
「負けたら罰ゲームだからな……。私も手は抜かんぞ」
「望むところだ、兄者!」

「……ロンです。『姉は苦労します』390点ですね」
「強いじゃないか、ベナウィ。本当に初めてなのか?」
「はい」
「こういうゲームは頭脳がものをいいやすからね。流石に大将は飲み込みが早いですよ」
「くっ、また俺からのロンアガリか!」
「……何つうか、こういう勝負運が無いねぇ」
「何だと!?まだ勝負は決まっていないだろうが!」
「そりゃそうだけどよ。敗色濃厚じゃねぇのかい?」
「ふん、そんなもの、最後までやってみなければ分からん」
「…………」

「ロンです。『三色』『闇の中の兄と妹』300点です」
「ベナウィ、主からも容赦無く点を奪うか……!」
「……勿論、勝負ですから」
「大将の独走ですかい」
「助かった……。これで俺と兄者、勝負は分からなくなったな」

「きた、ツモだ!『リーチ・一発』『三色』『辺境の姉妹草』『ウィツァルネミテアの契約』650点!どうだ!」
「……最後の最後に、何つー凶悪なアガリ役をしてくれんだよ、若大将は……」
「……これで聖上の持ち点は無くなりました。聖上の負けですね」
「くぅぅ〜!もう少しでり〜ぽんが揃ったものをっ……!!」
「兄者、負けは負けだ。潔く罰ゲームを受けるんだな」
「……仕方ない。それで、罰ゲームとは何だ?お手柔らかに頼むぞ」
「こういう勝負の定番といやぁ脱衣なんですがね。ま、男相手にそれじゃこっちが罰ゲームみたいになりやすから」
「聖上には、こちらを飲んで頂きます」
「……あぁ、罰ゲームお決まりの不味い飲み物か……」
「モッチョモとホッコモッコを入れた、剣奴特製の元気の出る茶だとか」
「……カルラだな」
「何だ。身体に良いのなら良かったじゃないか、兄者」
「お前な。それをエルルゥの薬湯を前にしても言えるか?」
「うっ!す、すまん」
「……ま、まぁ、味は凄かったが、コレで死ぬことはないだろう」

「ふぐぁっ……!……結構な……お手前だった……ぞ」
「……兄者の散り様、見届けたぞ……!」


*オンライン麻雀の日
オンライン麻雀を運営する株式会社シグナルトークが制定。

アルあそ内のり〜ぽんをさせてみました。(あれは二人打ちですが)
点数には役の他にアガリとリーチ分も加算されています。




4月27日
悪妻の日

「あの、デリ様……」
「何だ。危急の用か」
「そうではないんですけど……」
「では何だ。長くなるのでないなら、聞こう」
「その、失礼を承知でお聞きします!デリ様の、理想の女性はどういった方ですか?」
「理想の女性?……カトゥマウから何か言われたか。皇になった途端に、見合い話ばかりを持ってくるようになった」
「その……実は、お見合い話とは別の、個人的な質問なんですけど……」
「個人的?」
「デリ様の理想の女性がどんな方かをお聞きして、少しでもそんな女性になれたら良いなって……」
「成る程、向上心があるのは良いことだ。やはり俺の理想は、美しく、しとやかで、優しくて、可憐な女性だ」
「……それって、カルラゥアツゥレイ様のことじゃ……」
「ん、何だ?」
「いえ、何でもないです。……じゃあ、好まない女性はどういった方ですか?」
「理想と反対の者、ということになるか」
「反対というと……がさつで、横柄で、乱暴で……」
「強引で、素直でない……俺より、強い、女」
「あの、でもそれは……」
「……あぁ、確かに違うな。理想は心の美しい女性、そうでない者は、俺の理想とは言えん。そういうことに、なるか」
「きちんと心を磨いて……善い女性に、そういうことですね」
「あぁ、そうだ。今のままでは、お前の将来の夫が、少々気の毒かもしれんからな」
「そんな!ひ、ひどいですっ、デリ様!!」
「ははは、すまん。冗談にしても、言いすぎだった」
「よく励めば、お前は良き妻となるだろう」
「……え?デリ様、それって……」
「カトゥマウに、お前の見合いも見繕わせるとしようか。そうすれば、俺の分が減る」
「わ、私は良いですっ!お見合いなんて、するつもりありません!」
「そうか?俺への見合いの数が減り、お前には良縁が見つかれば、一石二鳥と思ったのだがな」

「……デリ様ったら、私の気持ちになんかちっとも気付いてくれないけど、それでも側に居られるなら……私は幸せです」


*悪妻の日
紀元前399年のこの日に刑死したソクラテスの妻が悪妻として有名であることから。




4月28日
サンフランシスコ平和条約発効記念日

「……お父様、今日は平和条約記念日」
「カレンダーか。それは、過去の遺物だな」
「平和を望む彼らを、それでも争いに導くの」
「我が子等は、争う事でしか高みに昇ることは出来ない」
「彼らは確かに争いを望む。でも、穏やかな日常を望もうともする……もう一人のお父様の願いは」
「ムツミ」
「……御免なさい、お父様……」
「我が子等を高みに導く事、それは我に科せられた業であるのだ」
「二人のお父様は、何度も私を一人にする。彼らを高みに導く為に。そして、その争いを止める為に」
「……ムツミ、何を言っている」
「皆、消してしまえば良い。そうすれば、そんな業からも逃れられる。私にも、お父様にも、その力がある」
「それは、出来ぬ」
「どうして」
「我には分からぬ。だが、ムツミ。お前には、分かるのではないか」
「私はただ、お父様達と、穏やかに過ごしたいだけ……。それが平和と呼ばれるものなら、私は、平和を望むのかもしれない」
「我らは二にして一。しかし、我には欠けているのだろう。……我には、分からぬのだ……」
「……お父様……?」
「……愛おしいと、想う気持ちがな。我にそれが分かれば、我が空蝉のように、穏やかな平和を望む事も……あったのやもしれぬな」

「……すまぬ、ムツミ」
「…………いいえ、お父様。お父様が、その業に縛られるのは、きっと……」


*サンフランシスコ平和条約発効記念日
1952(昭和27)年のこの日、前年9月8日に調印された「日本との平和条約」(サンフランシスコ平和条約)が発効し、日本の主権が回復した。




4月29日
みどりの日

「……ユズハが、土をかけても良いですか……?」
「しかし、それではユズハの手が汚れてしまう」
「そんなこと、平気です。ユズハが植えたって……ちゃんと……思いたいから……」
「……そうか、分かった」

「……これから毎日……成長を見守るのが、楽しみです」
「あぁ、そうだな。ユズハが、皆とこの木陰で休む日が楽しみだ」
「……はい。この木陰で皆が休める程……大きく元気に育って欲しいです」
「育つさ。この兄が、枯れさせたりしない」
「お兄様……枯れてしまっても、ユズハは良いのです」
「何を言う、ユズハ!」
「誰かが無理をしてまで……望んでいる訳ではありません」
「……そう、だな。……すまない」
「……でも、お兄様が大切にして下さるというのなら……ユズハは、嬉しいです」
「ユズハ」
「……ユズハは……いつまで見守ってあげられるか、分からないから」
「ユズハ!決してそんな事は」
「いいえ……あまり時間が無い事を、ユズハは知っています。……だから、ユズハが星になった後でも……お兄様や、トゥスクルの皆さんが大切にして下さるなら……とても嬉しい」
「勿論、大切にする……!だが、それでもユズハ、これはユズハの木だ。だからユズハが、出来るだけ長く護っていかなくては駄目だ」
「……はい。ユズハも、出来るだけ長く……この世(ツァタリィル)で護りたいです」
「……ユズハ。この木の名は『ユズリハ』という。役目を終えた葉があれば、新たな葉が後に芽吹く木だ。……そうして受け継がれてゆくものは、永遠と呼べるものだと思う。『ユズハ』というその名も、その存在も、伝え、受け継ぐ者がある限り、永遠のものだからな」
「はい……。有難うございます、お兄様……。ユズハは、とっても幸せです」
「…………ユズ、ハ…………っ」
「……お兄様……?声が震えて……。……頬が、濡れています。……ユズハの為の、涙ですか……?」
「……い、いや……これは……」
「ユズハは……涙よりも笑顔が欲しいです。……ごめんなさい、お兄様。でも、ユズハの最後の我侭だから……。どうか、笑顔でいて下さい。……ユズハが、星になる時も、その後も……」
「…………あぁ。約束、しよう。この……ユズリハに……」


*みどりの日
1989(平成元)年から2006(平成18)年までは、「みどりの日」であった。2007(平成19)年にこの日が昭和の日となり、みどりの日は5月4日に移動した。




4月30日
図書館記念日

「……ウルトリィ、これは古文書か?」
「はい。オンカミヤムカイの遺跡から発掘されたものの一部です」
「トゥスクル國内に新しく出来る図書館に、寄贈して頂ける事になりましたので、検分の為にお持ち頂きました」
「……こりゃ、紙で出来ているんですかい?珍しいですね」
「文化的価値が高いんじゃないのか。これを、一般に開放するのか?」
「えぇ。ですから、館内の一角をお借りして、展示させて頂く予定です」
「展示だけなのか。ユズハに内容を聞かせられるかと思ったのだが」
「あら、お飾りの巻本なんですのね。不親切な事ですわ」
「カルラ殿!お気持ちは分かるが、國師殿に無礼ではないか!?」
「……カルラ様、トウカ様、有難うございます。でもユズハは、様子を聞かせて貰えるだけで、嬉しいですから……」
「あのね、たぶん大丈夫だと思うんだ。絵があるから、それを見るだけでも結構楽しいんだよ。だからね、ユズっちにも聞かせてあげられると思う」
「えぇ。表にある絵や文字を眺めるだけでも、太古に想いを馳せられて、良いものですよ」
「絵があるってことは、昔の巻絵本みたいなものってことですね」
「アルルゥ、絵、見たい!」
「ね、お姉さま、アルちゃんとユズっちに見せてあげても良い?」
「えぇ。取り扱いには注意するのですよ」
「うん!……乱暴に触らないように、そ〜とね」
「ん、そ〜と……」
「じゃ、じゃあ、わ、私も〜……」
「でしたら、そ、某も……!」

「おー、女の子の絵。桃色の、裾の短い服着てる」
「とっても可愛い服ですよ。私もこんな服、着てみたいなぁ……」
「……アルルゥに似てて、可愛いにゃぁ〜〜」
「ふふ、アルちゃんに似ているなら、可愛い少女なのでしょうね」
「うん。見たこと無い服を着てたりして、面白いんだよ」
「ふぅん。なぁ、ウルトリィ、俺も他のものを見てみたいな。良いか」
「えぇ、どうぞ。一度皆さんで閲覧してみて下さい」

「「ねぇ、これ、若様にそっくりだよね!」」
「……そうか?」
「いや、確かに似てるぜ。しかもこっちは、大将にそっくりじゃないですかい?」
「そうですね。衣装、顔立ち、似た者が一人なら偶然とも言えますが、これは、私とオボロの似姿のように見えます」
「ちょ、ちょっと待て、お前達。私にも見せてくれないか」
「は……。こちらの辺りの巻本です」
「……これは……」
『……これは、平行世界から描かれた、私達の似姿。……私は、お父様受けが好み……』
「カミュちー?」
「……あ、あれ?カミュ、今何か言った?」
「……私が、受け……?!すまんがここにある巻本、全て見せてくれ」

「……ベナハク、クロベナ、ベナオボ……あぁ、良かった。普通に女性とのものもあるな……」
「おじさま、読めるの!?」
「……あぁ、いや……読めるというか、な」
「おとーさん、凄い!」
「ははは……読めない方がいっそ良かったのだがな……」
「……こちらは、何と書いてありますの?オボデリ?」
「あぁ、これはデリオボ……って、カ、カルラ!?まさか、読めるのか!?」
「いいえ?けれど法則を想像すれば、何となく分かるものですわ」
「ふふふ、流石ですね、カルラ」
「ということは、ウルトも大体は読めていますのね」
「えぇ。オンカミヤムカイで、日々研究しておりますから」
「……聖上、何か問題がありましたか」
「何かも何も、問題は大有りなんだが……」
「何だ、珍しいものだというのに、展示は無理なのか?」
「……ウルトリィ。普通の者は、表の文字は読めないのだな?」
「はい。オンカミヤリュー族の研究者数人、といった所でしょうか」
「……ならば大丈夫か。だが、一部のものは展示を遠慮させて頂きたい。構わないか、ウルトリィ」
「はい。元より、こちらにとっても重要文化財ですから、厳選させて頂く予定でした」
「……ちなみに……中を読んだ事は……」
「残念ながら、不可能なのです。開こうとした瞬間、崩れ落ちてしまう程に脆いのです。ですから、こうして表の形を維持する事が精一杯で」
「あ〜ら、残念ですわね。あるじ様受け、見てみたかったですわ」
「えぇ、本当に。ベナオボなども気になりますし……」
「私もこっちの……ハクオロさんと私に似た絵があるものとか……」
「某はこちらの……アルルゥに似た可愛い少女の巻絵本が……」
「「じゃあ僕達は、このお色気たっぷりな若様似の巻絵本が良いな。……ベナウィ様似の方がべったりな感じが、ちょーっといらっとするけどねー」」

「……お姉さま達、楽しそうだね」
「ん。でも、変な感じ、する」
「……はい。何だか少し……桃色の気配がしています……」

「……よく分からんが、盛り上がっているな」
「若い女子ってのは、ああいうもんが好きだと相場が決まってんだよ……」
「……私には、理解しかねます」

「何でも良いが、頼むから詳しく解析なんてしてくれるなよ!?」


*図書館記念日
1971(昭和46)年の全国図書館大会で決定され、日本図書館協会が翌1972(昭和47)年から実施。