氏神の子



*紫水の双子の娘が生まれた時の天界での話です。
*柚音は初氏神の娘です。来世が助産師でした。



「紫焔、柚音が呼んでるぜ。一番乗りさせてやるってさ」

 紫焔の私邸に顔を出したのは風早だった。常なら頼貴が来る。少し珍しい。

「…僕が一番乗り…?いいの?またじゃないか」
「柚音に聞いてくれ。でも、いいんじゃないか?暁穂もあの子達も、お前の孫だろ」
「うん、そうなんだけどね。…あの子たち?」
「行けばわかるよ。頼貴はお前置いてさっさと行っちまったぜ。とりあえず、伝えたからな」

 風早はさっさと姿を消した。『飛んだ』らしい。

「…みんな、浮足立ってるなぁ」

 ついさっき、いや、実際はもう半月は経っているだろうか。下界から子孫が子を授かりに来ていたのだ。
 交神の相手にでもならない限り、子孫と顔を合わせることはできないのがしきたりだから、顔は見ていない。会えたとしても、紫焔は遠慮しただろう。来ていたのは、氏神として授かった二人目の息子、紫水だったからだ。
 皆が浮足立っているのは、その赤子の方だ。赤子には、会えるのだ。その栄えある一人目の面会者に、また自分が選ばれたらしい。紫焔の長男の子、暁穂のときにも一番に会わせてもらっていたから、風早の言うように、血筋の近さで、ということかもしれない。

 離宮に飛ぶと、周囲には氏神の気配が多数あった。苦笑うしかない。暇でもあるが、何より、死を失った自分たちにとって、新たな命はまぶしくて仕方がないのだ。

「紫焔、来たわね。どうぞ」
「あぁ、失礼するよ」

 御簾の向こうでは柚音が赤子を抱いて待っていた。一人は抱かれて、一人は寝かされて。赤子は二人、いた。

「……双子だったのか」
「そうよ。…面白いものね。貴方の遺伝子は、双子が生まれやすいのかしら」

 微笑する彼女から、赤子を差し出された。受け取る。一人、そして、もう一人。

「…女の子だね。髪色も肌色も同じなんだね。一卵性みたいだ。……可愛いな」
「さすがに、手慣れてる」
「え?」
「赤子を一人抱くのにも、苦労するものよ。貴方は、易々と二人の赤子を抱いてるわ」
「……覚えているものなんだね、体は…。……もうずっと…ずっと昔の事みたいなのに」
「…昔の思い出にしてしまっては…可哀想だわ」
「……うん、そうだね。娘たちに、申し訳ないな」
「違うわ、貴方よ」
「?」
「……遠くに行かないで。私達も、この子達も…貴方の家族よ。昔でも、遠くでもない、今でも家族なんだから。…ね?お願いよ」
「……僕は、贅沢すぎるのかもしれないね」
「そうよ。初代様と貴方だけなんだから。4人も子を授かるのは」
「あはは、そうだね。娘が双子だったからなぁ」
「孫まで双子よ。大家族じゃない」
「……うん、ありがとう」

 腕に抱いた孫娘二人は、大人しかった。じーっと、紫焔の顔を見続けているようだ。彼女たちの父である紫水と、それこそ一卵性の双子のようにそっくりだったことを思い出した。それで、泣きもしないでいるのかもしれない。

「泣かないね。いい娘たちだ」
「貴方のあやし方が上手なのよ」
「父親と顔が同じだからじゃないかな」
「もう、そんなことないわよ。貴方、甘やかされたくてそんなことを言ってるの?」
「あはは、そうかもしれない」

 温かい、柔らかい、優しい、甘い匂いがしている。
 

 つい最近、いや、もう一年以上前にも息子を抱いた。ほどなくして、二人目の息子も。まさか、姉妹で続けてお相手に選んでくれると思っていなかったから、嬉しかった。それが、最後。最後の、俺の子。そう思った。

「……いや、違うか」
「紫焔?」
「…紫水を抱いたとき、僕の子は最後だなって思ったんだけど…そうじゃないんだ。…そうだよね?柚音」
「そうよ。だって、血はずっと、繋がっていくものだから」

 この娘たちには柚音の血が入っている。柚音にとっても、大切な娘たちなのだ。
 

 そうやって、血は繋がっている。







紫焔は氏神としてお相手に選ばれてから、徐々に壊れてたとこから治っていってるって感じかなぁ。
氷牙・紫水が氏神化して、二人と一緒にいるうちにようやく吹っ切れてくる、のかな?
うじうじしすぎだろー(笑
氏神という存在を一番嫌悪してて耐えられなかったのが紫焔、という設定に、すっかりなってしまった^^;

調べてみたら、柚音が氏神としてなした子の子孫だった。
柚音は来世で助産師になりたかった娘。
なので、乳母みたいなことをやってたらいいかも、と思って^^

この後は氏神たちみんなが赤子を見たり抱いたりしにきて大騒ぎになると思われます(笑
紫焔合わせて12人。
次に呼ばれるのは雄真かな。
雄真は紫焔の祖父なんだよね。しかも紫焔の娘の片方のお相手だったりもして(笑
大也でもいいけど。この子の血筋だから。
あとは、世代の近さで頼貴か…。柚音の気まぐれによるのかなぁ(笑
双子で天界にいる、緋乃都と緋乃恵なんかは、自分以外の双子が久しぶりに見られて嬉しいかも。
この二人は3組双子が同世代にかぶった子たちだから珍しくないか?(笑

氏神たちの関係性も意外とあっちこっち繋がってて、あらためて見てみると面白いです(笑