*R4周目・縁組一族での養子お迎え前の小話 作中一族 朝乃あさの 珂那かな 朝乃の母で当主 「朝乃、お前には何が見えてるんだい?」 まだ2ヶ月の娘は、きょとんとした顔をした。けれど、すぐににこっと笑った。 「何が知りたいん?珂那」 朝乃がどこか違うものを見ていることは、言動ですぐに気付いた。 最初は物怖じしない娘だとしか思っていなかったのだが。 「……朱点童子を倒したら、終わるのかい?」 眼差しがぶつかり合う。当主であるはずの、母であるはずの自分の方が、幼い彼女に負ける。 瞳の奥の深淵が…見えない。 「……珂那はごうきやなぁ。そないなこと、聞きたいんか?」 「……あたしには、時間がない。すぐに墓場に持っていける」 「そんなん、困る。うち、まだ小さいのに…」 「大丈夫さ。兄弟がたくさんいる。それに、もうすぐ朝乃の大好きなイケメンの兄弟も増えるんだぞ?」 「それとこれとは別やわ〜〜」 養子を迎えること、それを急に思い立ったのも、朝乃のことがあったからだ。 詳しくは知らない。知らなくていいことだ。 自分たちと似た境遇の、似た一族が他にも数多いるという事実。 その一族と関わりを持つことができる秘術がある、それさえわかればいい。 朝乃は、そうしたどこか…恐らく、自分達一族と限りなく近しい一族の…記憶を持っている。 それに気づいたとき、イツ花が声をひそめて教えてくれた。 『養子として、お強い方をお迎えするコトが、実はできちゃうんですよ〜〜』 沈黙の後、朝乃がぽつりと呟いた。 「……終わらへん。……堪忍な……」 「……ありがと。……朝乃こそ……辛くはない?」 「へーきや。必ず終わるってことも、知っとる。家族がいつも一緒やもん^^」 「………そう、必ず…終わるんだね……」 終わりは来ると信じてきたけれど、やっと、本当にそれを実感できた気がした。 そして、自分の愚かさにも。 (……家族を信じていないわけじゃない…。でも、きっとそれは、同じことだ……) 『……イツ花、養子を、貰いたい。強い方を…貰えるだけ、たくさんだ』 「……珂那、うちは嬉しいよ、家族が増えること。……それだけのことや」 優しい娘、愛する家族、皆はきっと、珂那を許すだろう。 それでも、あたしは、あたしをきっと……。
|