*R4周目・縁組一族での養子お迎え前の小話2 *他家お子さんを作中でお借りしています。 作中一族 朝乃あさの 悠ゆう R2周目初代 声にならない叫びが聞こえた。 叫んでいるのは自分。でも、叫んでいる心は自分であり、自分ではない。 『いややあああぁあぁぁぁああああぁぁ……!!!』 慟哭が、朝乃の胸にも、痛かった。 朝乃の体はすでに滅んでいた。 天命を成就したからだ。氏神にもなっていない。 だから今は、輪廻に加わるまでの、短くて長い刻の中を揺蕩っている。 自分の中に、たまに違う自分がいることを知っていた。 似ているけれど、似ていない魂の女性だった。 彼女の記憶…というより、一族の記憶が、朝乃にも少しだけ見えた。 彼女の気持ちは素直で分りやすくて、筒抜けで。 だから、その慟哭に朝乃は逆らえなかったし、逆らう気にも、ならなかった。 倒れているのは、1年余を生きた青年。 共に屋敷で暮らせるようになった息子に、年恰好がとても近しい姿だった。 『うちの大事な、うちの大好きな……!』 違う、違う、この子は違う。 朝乃の声は聞こえているのだろうに。 慟哭は止まない。 彼は、朝乃にとっても縁のある青年だった。 養子として迎えられ、朝乃や、家族を守って戦ってくれた、大切な家族。 その東の一族の、子孫の青年だった。 東の直接の系譜ではないけれど、同じ風の守護を受けた髪は、彼を思い出させた。 どこか遠くからも、静かな慟哭が聞こえた。 髪、瞳、肌の色、全てを同じくし、よく似た魂を持つ青年。 けれど、遠く、近く、届くようで届かない場所に在る。 とても近しい魂の兄弟は、相容れることのできない場所に在った。 その、片方が、欠けた。 『…あれは、朔と違う』 同じ顔をした、けれど似ていない女性は、ぼろぼろ涙を零すまま、拭いもせずに。静かに微笑んだ。 『知ってる。わかってるんよ』 『これも、天命や』 『…そうやね。それも、わかってる…。…でも、あの子の顔が、忘れられんのよ…。朔ちゃんと同じ顔で…朔ちゃんみたいに……』 あの青年の最期は慟哭にかき消され、朝乃には判然としなかった。でも、彼女には、見えていて、聞こえていたのかもしれない。 『…ごめんな…。うちの我儘で、引っ張ってしもたかもしれんね…』 『……ええよ。うちはもう、こんなんやから、助けにならん。けど、うちの自慢の家族、あんまり見くびらんとって。これくらい、大歓迎や』 『ありがとうな…!そうやったね。うちも、知ってるよ!』 受け取ったのは、創巫。東の血を引く孫娘。 あの兄弟は、近くて遠いこの『家』で、幾ばくかの刻を共に生きることになるだろう。 『うちの一族は、イケメンにうーんと、弱いんや』
|