*R4周目・縁組一族で氏神結魂させて頂いた東巫と他家氏神の創司さんの話。 *東巫と氏神の創司さんとが初めて会ったときのやりとりっぽいものです。 *他家お子さんを作中でお借りしています。 作中一族 東巫とうこ 『緋の髪色は、本当の色じゃないんだ……』 あぁ、とても痛いものが、刺さっている。今も、まだ抜かないでいる、そんな気がした。 緋色の髪がとても綺麗だった。自分と同じ色。少しだけ、夕陽を帯びた色だった。 ただ思ったことを、そのまま口に乗せただけ。 『美しい髪ですね。わたしと、お揃いです』 彼は、優しい笑顔を浮かべていた。 でも、東巫には、痛かった。これは、わたしの痛みじゃない。 「本当ってなんですか?」 刺さったものが、何かは知らない。彼にしかわからない。彼もわかっていないのかもしれない。 本当は、そっと傷を包んで、触れない方がいいのかもしれない。 抜いたら、傷から血が吹き出すかもしれないのだから。 「……染めているんだ。……本当の色は、新緑の色。…貴方のような緋の色を、俺は持っていない」 あぁ、なんだ、そんなこと。 何も知らないわたしは、ただそう思った。 「新緑の色なら、わたしの父とお揃いです。わたしは、どちらの色も大好き」 困ったような顔。 伝わらなかったようだから、別の言葉を探した。 「二色に守護されているんですね。貴方を愛する色は、どちらも美しいです」 彼は、沈黙している。表情は、困っているような、びっくりしているような、もう、よくわからない。 わたしがきっと、おかしなことを言っているからだ。 「あ、あの、わたし、新緑色の髪も、見てみたいです。絶対、美しいから……」 今度ははっきりと、困った顔になった。 「…それが…。こちらに来てから、緋色のままなんだ。…どうしてか、わからないが…」 ふわりと柔らかな光が彼を包んだ気がした。 春の陽だまりの光が、東巫と彼を、包んでいる。 温かい、父の手のぬくもりに似ている。 陽だまりを、嬉しそうに駆ける少年の、緋の髪が通り過ぎる。 鈴を鳴らしたような笑い声が、言っている。 『ねぇ、とても綺麗な色でしょう…?』 彼の髪が、光に透けた。春の陽だまりの中の、柔らかな若葉のような。 父、東の髪色とは違う。 東の色は、夏の日差しの中、生き生きと茂る青葉の色だから。 「ふふ…!わたしの父さまとは、似てないみたい。…貴方の心の色は、どちらも、とても美しい色。…わたしは、どちらの色も、好き。どちらの、創司さんも、好き」 手を伸ばして、髪に触れた。 柔らかい温かい感触。 痛くはなかった。刺さったままに、けれど、今は痛くない。 この笑顔を、ずっと、見ていられたらいいのに。 いつか、若葉に刺さった杭を、陽が溶かし、幹と共に一緒になって。 こうしてずっと、笑ってくれたらいいのに。 わたしが、その陽に、なれるだろうか。
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