*R4周目で悲願達成メンバーとして地獄巡り行っちゃった凌紅を待ってる梅葉と留守番組の話。 作中一族 梅葉うめは 凌紅の一卵性双子の弟 凌紅りょうく 梅葉の一卵性双子の兄 明鈴めいりん 鈴麦すずむぎ 養子。閑那の兄 閑那かんな 養子。鈴麦の弟 体が痛い。アチコチ痛い。 屋敷の奥の、あまり使わない客室の隅っこで、羽織をかぶってうずくまっている。 自分の痛みではないが、赤いうっ血、みみずばれが浮き上がって、痛みを与えては、消えてゆく、繰り返し。 「…ばかったれー、なに怪我ばっかしてんだよー…。…痛ってーじゃねーか…」 それでも安心感がある。傷は負っても、それは痛みと共に消える。何度でも傷は出来るが、必ず消える。 「……俺も、シンジャウかもしんないじゃん…凌紅の……ばか…」 決めたのは、家族のみんな。 凌紅や梅葉より幼い子達も選ばれて、自分より痛くて苦しい思いをして、彼らは今戦っている。 己のため、家族のために。 「…あ、いたわよ、こっちこっち」 暗闇に一筋の光が刺した。まぶしい。逆光の向こうに、人影があった。声は、明鈴だ。 「……お願い〜放っておいてくれよ〜〜」 「なっさけない声ね。いつもの元気が形無しね」 羽織越しに背を撫でる、優しい掌の感触がした。ほっとする。 その、梅葉より少し大きな手は、鈴麦のものだ。 「……大丈夫か?…痛いんだろ?」 「……これっくらい、どーってことない」 「……凌紅に感応してるのか?」 「そうみたいよ。風春と風近にも、多少はあったみたいだけど。あの二人は似てないし、どっちも鈍かったしね」 「…そう、俺たち、繊細なんだー」 「俺、わかるかも。なんとなくだけど、閑那が痛がってたら…俺も、わかる気がするから」 「鈴麦…」 鈴麦と閑那は兄弟だ。双子ほどではないにしろ、血は濃いからだろうか。 絆の深いこの兄弟なら、ありそうだ。 「で、どんな感じ?」 「悪趣味」 「肝が据わってると、言って欲しいわ」 「……俺が、発狂して暴れ始めたら…どうすんの…?」 「……ないだろ、それは」 「うん、ないと思う」 「まぁ、そういうことよ」 「……楽観的だねーみんな……」 「…梅葉もそうだと思ってたけど?」 「……そりゃそうだけど、人が痛がってるの見に来るなんて、悪趣味じゃん」 「看病と言って。…こういう気遣いを、貴方がするとは思わなくて、びっくりよ」 「…ごめんな、痛い思いしてんのに…。けど、俺も、鈴耶の痛みを、見てたいんだ」 「……そんなの…明鈴と鈴麦こそ、横になってた方がいいだろー」 「漢方薬、飲んだもの」 「俺も^^; 苦かったー」 「だから、今の梅葉よりは、元気だわ」 明鈴、鈴麦は娘と息子が凌紅と共に地獄へと赴いている。 一憲と仲の良かった明鈴は、一未のことも、娘のように可愛がっていた。 当主、凌紅を隊長に、一未、鈴音、鈴耶の4人が、今、戦っているのだ。 明鈴と鈴麦は、もう天命が近かった。 だからこそ、討伐隊からは外され、子に、希望が託された。 佑一族には、どこか遠い場所で、同じように戦っている一族たちの血が、多く混じっている。 養子も数名迎えている。鈴麦と閑那も、遠いどこかの一族で、離れて生きる兄弟だった。 今戦いに赴いている4人には、それら他家一族の血と想いが、たくさん流れている。 「…他のチビ共には、言ってないよね?」 「当然よ。梅葉が発狂死したりしたら、トラウマになるじゃないの」 「ちぇー、そんなことには、ならないよ………!!?」 悪寒が走った。すごく、嫌な気持ちがする。強烈な瘴気に、当てられている。 「…や、ば…い…かも……」 「梅葉!」 体を一層丸めても、寒気が襲ってくる。戦場では慣れているはずの空気、それを屋敷で味わうと、こんなにも恐ろしいものだったのかと、今更ながらに思う。 しかも、今までの親玉のどれよりも、気持ちが悪い気配。 アイツの、気配だ。 「…手、握って…」 「……わかったわ。…鈴麦、閑那も」 「…梅葉……」 「……違うぜー。俺じゃなくて…地獄で戦ってる…家族と…一緒に戦うんだよ」 梅葉が凌紅の痛みを感じるなら、梅葉の心と、握られた手の温もりも、伝わるはずだから。 「……鈴音…!一未…!無茶しないで…生きて帰ってくれれば、いいんだから…!」 「鈴耶、男を見せろよ!」 「…心が負けなければ…それでいい。生きていれば、俺たちはそれが嬉しいんだから…!」 「がんばれ…負けんな…愛を知らないヤツになんて…俺たち、負けるはず、ないんだからな…!!」 先ほどより体が痛い、あちこち痛い。死にそうになっているのが、わかる。 でも、立っている、踏ん張っている、痛みは消えて、熱い心が伝わってくる。 届け、届け、俺たち、家族の想い。 受け取れ。 そして、ぶつけて、知らせてやろう。 可哀想な、アイツに。
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